Danny Weber
13:58 21-11-2025
© A. Krivonosov
テスラは内製スーパーコンピューターAI5の量産を2027年半ばへ延期。ロボタクシーCybercabはAI4で開始し、完全自動運転は不透明に。ハード再編の影響と運用範囲、既存車向けソフト強化の見通しを解説。ステアリングとペダルの是非を巡る議論や、当面は世代差が小さい利点、リスキーな賭けとなる可能性も含めて最新動向を総括。
テスラはまたしても中核技術のロードマップを組み直している。イーロン・マスク氏は、オートパイロット向けの次期内製スーパーコンピューター「AI5」が必要な量で出荷できるのは2027年半ばになると認めた。その余波で、2026年に予定されているロボタクシー「Cybercab」は、現行のAI4プラットフォームでのスタートに切り替わる。これは、いま販売されているModel S/3/X/Yに載っているのと同じハードウェアだ。
遅延幅は小さくない。2024年当時、マスク氏はAI5を2025年下期に投入し、現行世代の10倍の性能になると語っていた。いまは、新プロセッサーへ本格移行する前に、完成基板を数十万枚規模で積み上げる必要があるという。計画のハードルの高さが改めて浮き彫りになった。
この方針転換は、ステアリングもペダルも持たない完全自動運転車というCybercabの構想と正面からぶつかる。AI4はまだ真の自律走行を実現できる段階にないため、ロボタクシーの実際の運用範囲は狭まる可能性がある。こうした背景から、テスラの会長は最近、ステアリングとペダルを搭載する余地に言及したが、マスク氏は公の場でその案を退けた。
一方で、AI5のつまずきには裏面もある。テスラは新システムの高い天井を狙うより、当面は既存ハード向けのソフトを磨き込む時間を増やすことになる。足元では現行テスラのオーナーも取り残された感は抱きにくいはずだ。世代間の差は、しばらくの間は小さくとどまるからだ。
それでも、中核技術の再延期は、同社が掲げてきた完全自動運転という大胆な約束に改めて疑問符を投げかける。もしテスラが運転装置を一切持たないCybercabを本当に送り出すなら、これまでで最もリスキーな賭けになる。綱渡りに近い判断で、ミスの許容幅はほとんどない。