Danny Weber
12:24 24-11-2025
© A. Krivonosov
米商務省がNvidia H200の対中輸出ライセンスを審査中。許可なら中国のAIアクセラレータ市場で競争地図が変化。Huawei Ascendの台頭、関税見直し、Blackwell承認動向も解説。国家安全保障を優先する米国の輸出規制再調整や、売上成長見通し72〜75%の試算にも触れ、影響を多角的に分析。
Nvidiaは、中国向けにより高性能な人工知能アクセラレータ「H200」を輸出するためのライセンスについて、米商務省の決定を待っている。トランプ政権の政策に通じた関係者によれば、同省は最先端の米国技術にかかる現行の制限を一部緩めるかどうか、判断を検討しているという。可否ひとつで競争地図は変わるだけに、視線は自然とワシントンに集まる。
H200は同社でも屈指の性能を誇るGPUだ。Hopperアーキテクチャを採用し、TSMCの4ナノ製造で、HBM3eメモリを141GB搭載、帯域幅は最大4.8TB/秒。大規模言語モデルや高性能システムに向く。中国へ出荷が許可されている中で最も高度なチップであるNvidia H20と比べて、およそ2倍の処理能力を持つとされる。
先端技術が中国の軍需分野に渡るとの米国の懸念は、これまで輸出規制を後押ししてきた。最強クラスのNvidia製品に対する禁輸は、同社の中国での売上を押し下げる一方、HuaweiのAscendなど地場の代替品の台頭を加速させた。アナリストのデータでは、Ascendは現在、中国のAIアクセラレータ市場で約79%を握っている。
ホワイトハウスと商務省の担当者は、H200の許可の可能性について直接のコメントを控える一方で、国家安全保障と米国の技術的優位を最優先すると強調している。規制のツマミをどこまで回すか、その塩梅が問われている。
同時に、ワシントンは輸出ルールの選択的な緩和を続けている。最近では、サウジアラビアのHumainとUAEのG42に対し、次世代のNvidia Blackwellアクセラレータを最大7万基出荷することを承認した。これらのチップは、次のAIシステムの波の土台になる見込みだ。
H200をめぐる審議は、中国向け制限の見直しと歩調を合わせて進む。直近の二国間合意では、米国は中国からの輸入品に課す平均関税を48%に引き下げると表明しており、輸出政策全体の再調整を示唆する動きにも映る。
Deepwater Asset Managementのジーン・マンスター氏は、ルールの変更がNvidiaの中国事業の見通しを大きく押し上げ得ると指摘する。現行の前提では、中国からの売上成長はおよそ60%と見積もられるが、H200の輸出が再開されれば72~75%に達するとの試算もある。ひとつの製品認可が同社の軌道を左右し得るという現実を、数字が雄弁に物語っている。だからこそ、この判断は市場にとっても見過ごせない。