Danny Weber
21:01 25-11-2025
© A. Krivonosov
Samsung InternetのPC版が登場。Windows 10/11とARMに対応し、米韓でベータ開始。履歴・ブックマーク・パスワードをGalaxyと同期し、AIの要約/翻訳や強力な追跡防止も搭載。プライバシーダッシュボードを備え、Windowsユーザーも利用可能。GalaxyエコシステムをPCに広げるブラウザ。
Samsungが自社ブラウザ「Samsung Internet」をPCに正式投入した。Galaxyスマートフォンの枠を越え、Windowsデスクトップへ拡大するのは初の本格展開だ。モバイルアプリは13年以上の歴史がある一方で、デスクトップ版は長らく見送ってきた経緯がある。ここにきて方針を切り替えたのは、ようやく腹をくくった印象だ。
提供は米国と韓国でのベータから。対応環境はWindows 10(バージョン1809以降)とWindows 11で、ARMベースのデバイスもサポートする。Galaxy Bookに限定されることはなく、Windowsユーザーであれば誰でも使える点は間口が広い。
WindowsではChrome、macOSではSafariが主導権を握るなかで、Samsungの狙いはGoogleを打ち倒すことではない。むしろ自社エコシステムの結束を強め、GalaxyユーザーにiPhoneとMacの組み合わせに近い体験を提供することにある。大きな売りは深い同期だ。履歴、ブックマーク、保存パスワードをスマートフォンとPCの間でシームレスに引き継げるため、SafariやHandoffで感じるような連続性に近づく。日々の手間が減るこうした連係は、机上のWindows端末がどのメーカーであっても、Galaxyへの愛着を静かに強めるだろう。
デスクトップ版はGalaxy AIの機能も取り込む。内蔵の「Browsing Assist」はページ翻訳と要点の簡潔な要約に対応し、ウェブ作業の負担を軽く感じさせる。さらにモバイルで培ったプライバシー対策をPCにも展開。高度なトラッキング防止に加え、ブロックした脅威を可視化するプライバシーダッシュボードも備える。
突き詰めれば、PC版Samsung InternetはWindows、Android、そしてGalaxyハードウェアのあいだに橋を架ける試みだ。閉じた庭に寄せるAppleとは対照的に、異なるプラットフォームを編み合わせにいく発想である。あとはどれだけのユーザーを呼び込めるか。一定の規模を獲得できれば、収益性の高い検索提携やAIサービスとの連携など、新たな機会が開ける可能性がある。質の高いユーザーデータを求めるプレイヤーにとっても、関心の的になりそうだ。