マクダーミット・カルデラで世界最大級のリチウム鉱床—米国と電池サプライチェーンへの影響

Danny Weber

10:23 02-12-2025

© A. Krivonosov

ネバダ・オレゴン州境のマクダーミットカルデラで、推定1.5兆ドル相当の世界最大級リチウム鉱床を発見。2,000万~4,000万トンの粘土質資源は露天採掘が可能で、米国の資源安全保障と電池サプライチェーン強化に直結する見通し。スーパーボルケーノ由来の地質とThacker Passの浅部賦存が採算性を高め、需要支える。

ネバダ州とオレゴン州の州境に広がる太古のスーパーボルケーノのカルデラで、記録上最大級のリチウム鉱床が見つかった。推定価値は約1.5兆ドル。研究チームは、McDermitt Calderaにリチウムを含む粘土が2,000万~4,000万トン存在する可能性があると見積もっており、世界の電池産業を数十年にわたり支えうる規模だとしている。

調査を率いたのは、Lithium Americas Corporationの地質学者Thomas R. Benson。約1,600万年前の巨大噴火でマグマ溜まりが崩落し、広大なカルデラが形成されたという。その後、水で満たされた盆地に火山灰や堆積物が降り積もり、さらに熱水が鉱物を地表近くへ運び上げた結果、粘土層にリチウムが濃集した、と説明している。

現在のThacker Pass一帯では、最大約30メートルに及ぶリチウムに富む岩層が地表近くに広がり、露天採掘に適した条件がそろう。埋蔵物が浅いぶん、開発の採算性はぐっと高まる。

米国にとっての意味合いは小さくない。これまでもリチウムを産出してきたが、1960年代から操業するSilver Peakが長らく主力だった。アーカンソー州南部の推定埋蔵量(510万~1,900万トン)が示すように裾野は広がりつつあったものの、McDermittの規模はそれらを上回ると見られ、存在感は一段と際立つ。

世界のリチウム需要は、2022年比で2040年に8倍へ膨らむ見通しだ。こうした大型鉱床を生産段階に乗せられれば、米国の資源安全保障に直結するだけでなく、世界の電池サプライチェーンの安定にも効いてくる。推定が裏づけられれば、重要鉱物をめぐる計算は組み替えを迫られるだろう。

研究者らは、技術の歩みが続いていることも指摘する。リチウムイオンの代替としてナトリウムイオン電池などが開発中だが、現時点ではエネルギー密度や寿命で見劣りする。当面はリチウムが電池産業の主軸であり続け、この鉱床がその流れをいっそう確かなものにしかねない。