Danny Weber
17:39 08-12-2025
© A. Krivonosov
AppleがTSMC依存を下げるため、iPhone向けAシリーズの一部製造をインテルに委託する計画が浮上。14Aプロセス採用で2028年に量産開始か。設計はAppleが担い、品質や供給安定性の向上が狙い。対象はPro以外のiPhoneで、仮称A22/iPhone 20世代に対応。ARM互換設計は従来通り。
インテルがAppleのエコシステムに戻ってくるかもしれない。ただし、多くが想像した形とは少し違いそうだ。投資会社GF Securitiesの新たな報告によれば、Appleは将来のiPhone向けチップの一部製造をインテルに委ねる案を検討しており、早ければ2028年ごろに生産が始まる可能性があるという。
アナリストのジェフ・プー氏は、Pro以外のiPhone向けに、モバイル向けプロセッサの一部をインテルが受託製造する供給契約に両社が至る見込みを示している。この計画には、インテルが開発中の14Aプロセスが使われるとされ、時期的には仮のiPhone 20向けA22チップや、簡素化されたiPhone 20eと足並みがそろうと見られている。
報告書は、インテルがチップのアーキテクチャ設計には関与しない点を強調する。SoCの設計は引き続きAppleが担い、製造の一部を、主要パートナーであるTSMCと並んでインテルが担当する形だ。要するに、設計図はAppleが握ったまま、生産パートナーをもう一社加えて負荷を分散するわけだ。
インテルが部分的にApple圏へ戻る兆しは、これが初めてではない。以前、ミンチー・クオ氏は、早ければ2027年にもインテルがIntel 18Aプロセスで、低価格帯のMacや一部のiPad向けの下位Mシリーズチップを生産し始める可能性を示唆していた。
ここで押さえておきたいのは、これはかつてMacBookに使われていたインテルのx86チップとは無関係だという点だ。今後インテルがApple向けに作るプロセッサは、現在のMシリーズやAシリーズと同じく、AppleのARM互換設計に基づくことになる。
では、なぜAppleはこの道を選ぶのか。同社はここ数年、サプライチェーンを多角化し、TSMC一社への依存を下げる取り組みを続けてきた。インテルを巻き込めば、半導体供給の混乱に対する耐性が増し、製造キャパシティにも余裕が生まれる。インテルにとっては、大口顧客を取り戻し、市場での存在感を強める好機だ。全体として、Appleにとっては現実的な保険策、インテルにとっては実力を測る試金石に映る。
肝心なのは、インテルの生産品がTSMCにどこまで迫れ、Appleの品質基準を満たせるかという点だ。判断にはまだ早く、この系統のプロセッサを積んだデバイスが登場するのはこの10年の後半になる見通しだ。もしインテルが結果を出せば、得をするのは皆だ。Appleは安定を、インテルは受注を手にし、ユーザーは違いに気づかないかもしれない。