Rivian、内製AIチップRAP1とACM3で自動運転を加速

Danny Weber

13:43 13-12-2025

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RivianがArmv9採用の内製AIチップRAP1と車載計算機ACM3を公開。INT8で1800TOPS、LiDAR正式対応。Universal Hands FreeやAutonomy+、Large Driving Model、VW提携まで詳しく解説。RivLinkや5nm、14コア構成など技術の狙いも網羅。

Rivianが自動運転で一手先を読んだ。自社開発のAIチップ「RAP1」とオンボード計算機「Autonomy Compute Module 3(ACM3)」を公開し、ハードだけではなく“クルマの頭脳”で勝負する姿勢を鮮明にしたのだ。これまでテスラの代替と括られがちだった米EVメーカーは、水面下でソフトウエアとサービスを軸に事業を磨いてきた。その延長線上に今回の発表がある、という受け止め方が自然だ。

新スタックの核は第1世代の「Rivian Autonomy Processor」。Armv9アーキテクチャに基づく完全内製設計で、Cortex‑A720AEコアを14基搭載し、5nmプロセスで製造される。注目は独自の高速インターフェース「RivLink」の導入だ。チップを連結して性能を拡張できる設計で、詳細はまだ限られるものの、車載計算のモジュール化へ舵を切った方向性が読み取れる。

このRAP1はACM3の心臓部となる。自動運転タスクに最適化された車載コンピュータで、INT8で最大1,800 TOPS、カメラ映像は毎秒50億ピクセルまで処理可能とされる。テスラの思想と一線を画すのがLiDARの正式サポートだ。ACM3はLiDARとの連携を前提に設計が進んでおり、2026年末に予定されるR2クロスオーバーの将来版に向けた組み合わせは、すでに検証段階にあるという。センサー構成を広げる判断は、実装面でも運用面でも現実的で筋が通っている。

現行の第2世代R1オーナー向けには「Universal Hands Free」を準備中だ。コンセプトとしてはAutopilotに近く、米国とカナダの約350万マイルの道路をカバー。高速道路だけでなく、明瞭な車線標示がある一般道でも作動する。さらなる機能を求めるユーザーには上位の「Autonomy+」を用意し、買い切り2,500ドルまたは月額49.99ドルで選べる。Rivianは「完全自動運転」を安易に掲げるのではなく、安全を最優先に据え、レベル4へ向けた段階的な一歩として提示している。この慎重さは、むしろ堅実で好ましい。

同社は言語モデルに近い発想の「Large Driving Model」にも傾注している。DeepSeekに見られる手法に近いとされるGroup Relative Policy Optimizationを用い、ドライバーアシストの学習で優位性につながると位置づける。LiDARなしで2,000〜2,500 TOPSを実現するというテスラの次世代HW5の噂とは対照的に、Rivianの道筋はあえて異なる。ここに、フォルクスワーゲンと結んだ58億ドル規模の収益性あるソフトウエア/アーキテクチャ合弁も重なる。自社ラインアップを超えて自動運転技術をパッケージ化し提供する——そんな視野の広い戦略がうかがえ、純粋な自動車メーカーからプラットフォーム供給者へと役割を広げる布石にも見える。