Danny Weber
20:13 25-12-2025
© A. Krivonosov
時価総額5兆ドルのNVIDIAがGroqと200億ドルの戦略的ライセンス契約を締結。高速かつ省電力なプロセッサーをAIファクトリーに統合し、リアルタイムAIと次世代データセンター運用を加速する動きを詳説。主要エンジニアの合流や規制環境を踏まえた柔軟な提携の狙い、企業向けスループット重視の運用拡大も解説。
10月に時価総額が5兆ドルを突破した米エヌビディアが、Groqと200億ドル規模の戦略的ライセンス契約を結んだ。狙いは、リアルタイムの人工知能に特化した次世代データセンター「AIファクトリー」の計算基盤を底上げすることだ。契約の一環として、Groqの創業者ジョナサン・ロス、社長サンディープ・マドラに加え、主要エンジニア数名がエヌビディアに合流する。彼らはGroqの技術を同社のエコシステムに統合し、特化型AIプラットフォームの開発を加速させる役割を担う。ライセンスと技術の担い手をセットで迎える、現場重視の布陣と言える。
Groqは、超高速のAIワークロード、とりわけ自然言語処理に最適化したプロセッサーを開発している。同社は、従来型のエヌビディアやAMDのGPUと比べてエネルギー効率が10倍になると主張する。この特性は、待ち時間の少なさや応答の予測可能性が求められるチャットボット、AIアシスタント、リアルタイムシステムに向いている。もし大規模運用でも効率が維持されるなら、常時稼働のサービスにとって魅力は筋が通る。
エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは、Groqの技術が同社の「Nvidia AI Factory」アーキテクチャの重要な要素になるとの見方を示した。大規模計算とリアルタイムでのモデル提供を想定するこの基盤にGroqのプロセッサーを取り込むことで、とりわけスループット重視のサービスや企業向け運用で、エヌビディアのエコシステムが担える仕事の幅が大きく広がると述べた趣旨だ。要するに、重い計算と即時応答のワークロードを同じ傘の下にまとめる構想が鮮明になった。
今回の合意は、AIチップ市場の競争が一段と激しくなるなかで発表された。グーグルやマイクロソフトを含むエヌビディアの大口顧客は、GPU依存を下げるために自社開発のプロセッサーや代替アーキテクチャへの支援を強めている。アナリストは、米欧での独占禁止法の審査が厳しさを増す環境下では、全面買収よりも技術のライセンスとチームの受け入れを優先する動きが有力になっていると指摘する。そう考えると、規制の摩擦を招かずに性能を積み上げられる柔軟な枠組みは、今の局面で最も現実的な手だてに映る。