Danny Weber
19:53 26-12-2025
© A. Krivonosov
サムスンがGalaxy S向けにBOE製OLED採用を検討。特許紛争の和解を機に協議が進展、メモリ高騰で増すコスト圧力に対応。アップルの事例や垂直統合とのトレードオフ、業界への波及を読み解く。サムスンディスプレイとの関係や供給の持続性、ブランドへの影響も検証。コスト優先の是非も考察。Exynos回帰との連動も注目。
サムスンが意外な一手を準備している可能性がある。フラッグシップのGalaxy Sに、中国BOE製のOLEDディスプレイを採用する案だ。複数の関係者によると、同社はBOEのパネル調達を検討しているが、最終判断には至っていない。
報道によれば、長年続いた特許紛争の決着を受け、サムスンディスプレイとBOEは最近、協議の場を持ったという。かつてBOEはサムスンの特許を侵害したと認定されていたが、和解によって初めて協業の可能性を話し合える環境が整い、数年前なら想像しにくかった関係への扉が開いた。
こうした方針転換の狙いは単純で、コストの圧縮だ。Galaxyの最上位機はこれまでサムスン自社製のディスプレイを搭載し、その品質は業界でも高く評価されてきた。だがAIインフラ拡大に伴うメモリ価格の上昇などで製造コストがかさみ、同社は削減余地を探らざるを得なくなっている。
アップルはすでにiPhone向けにBOEのOLEDパネルを採用しており、サムスンディスプレイやLGディスプレイより安い価格が決め手になっている。近年は、韓国勢への依存を下げるため、供給網に占めるBOEの比率を段階的に高めてきた。サムスンにとって同様の選択は、ブランドの見え方では痛みを伴いかねない一方、損益の帳尻という現実にはかなう——そんな読みが働いているように映る。
もし提携が具体化すれば、スマートフォン業界全体への明確なシグナルになる。コスト抑制のために自社製Exynosへの傾斜を強めるサムスンは、ディスプレイでも垂直統合のこだわりを価格競争力と引き換えにする構えを見せつつある。あとは、BOEとの関係がどれだけ持続性を持てるのか——そこが最大の焦点だ。