AIデータセンターを宇宙へ――電力・熱管理・放射線・通信の壁と現状

Danny Weber

12:31 27-12-2025

© Сгенерировано нейросетью

AIデータセンターの宇宙移設は実現可能かを徹底解説。電力供給や巨大太陽電池アレイ、放熱器中心の熱管理、放射線遮蔽、衛星通信の帯域、コストと保守まで課題を網羅。現状で地上が現実的な理由も提示。データ往復のスループット不足や修理ミッションのリスク、環境負荷とのトレードオフ、将来の技術進展の見通しにも触れる。

AIのデータセンターを宇宙へ移す――発想としては限りなく美しい。用地制約はなく、太陽光を安定的に得られ、地球環境への負荷も最小限。クリーンで拡張性の高い未来が開けるように見える。だが、BODA.SUが指摘する通り、現時点ではその絵姿はまだ手が届かない。

最大の障壁は電力だ。必要量の桁の大きさと安定供給の双方が問題になる。現代のAIは巨大で途切れない電力を求め、地上ですら既存の電力網がその負荷に悲鳴を上げ、企業はガス火力に傾きがちだ。軌道上では太陽光が豊富でも、需要を満たすには巨大な太陽電池アレイが必要で、その打ち上げと展開は今の技術とコストでは過度に複雑で高価になる。

さらに厳しいのが熱管理だ。サーバーは膨大な熱を放出するが、真空では一般的な冷却手段が通用しない。頼れるのは放射冷却だけで、過酷な環境に耐える大型で頑丈な放熱器が要る。だが、その規模の軌道上コンピューティング施設を確実に冷やせる、実証済みの解はまだ存在しない。

放射線と通信も難度を押し上げる要因だ。宇宙は汎用電子機器にとって過酷で、サーバーを放射線から守る遮蔽は質量とコストを大きく膨らませる。一方で、AIデータセンターは地球との間で膨大なデータをやり取りする必要があるが、現在の衛星通信はそのスループットを想定していない。保守や修理はそれ自体が高額なミッションになり、運用モデルはどうしたって脆くなる。

すでに実験は始まっているものの、内容は小型の衛星搭載処理ノードやバックアップ保存の概念にとどまる。本格的な軌道上データセンターの実現は、まだ当分先だろう。少なくとも当面、AIは地上にとどまり、この分野は地球の縁ではなく足元で、エネルギーと環境という難題に向き合うほかない。