IDCが読む2025年PC市場の伸長:メモリ不足と在庫積み増しの真相

2025年末、世界のPC市場は予想外の伸びを記録した。ただし、この明るい数字には注釈が付く。IDCの新しいレポートでは、2025年第4四半期の出荷台数が前年同期比9.6%増、通年では2024年比8.1%増と見積もっている。急伸の波は最終四半期に集中し、活発な需要というより、差し迫るメモリー逼迫を見越したベンダーの先回りが牽引した格好だ。

トリガーのひとつはWindows 10の公式サポート終了。更新サイクルが回り出し、Copilotに対応するWindows 11搭載の新型PCの販売を押し上げた。さらに、関税をめぐる不透明感が数カ月続くなか、企業が在庫を厚くした面もある。とはいえ、決定打になったのは急速に悪化するメモリー市況だ。

PCメーカーはDRAMやNANDの供給に深刻な支障が出ることを懸念し、積極的な在庫積み増しに踏み切った。現在のメモリー生産の多くがデータセンターやAIインフラに流れ、民生向けは手薄になっている。価格を押し上げると分かっていても、早めに買い付ける判断を選んだベンダーは少なくない。懸念はRAMにとどまらず、SSDや他のいくつかの部品にも及び、不足は2028年まで続く可能性がある。

IDCは、1年後にはPC市場の景色が今とは大きく違って見えるかもしれないと指摘する。システム価格はすでに上向き始め、限られた供給をやりくりするため標準メモリー構成を絞る動きも出かねない。専門家は、市場シェアの並び替えにも注意を促す。確実な納入を確保できる大手が優位に立ち、規模の小さい企業や地域ブランドはこの局面の突破に苦戦しそうだ。買い手にとっては、2026年の平均PC価格の上昇と、より高価格帯に傾いた製品構成を覚悟することになる。端的に言えば、回復は現実だが、その推進力は勢いより不安の方に近い。